日本酒にまつわる話
酒にまつわる話など
つれづれなるままに記載しています
屠蘇とは
お屠蘇は、元旦に呑むと一年の邪気(じゃき)を避けるといわれる飲み物です。
昔、中国の三国時代(西暦200年頃)、魏の国に辛陀(かだ)という外科の名医が居て、屠蘇散を初めて作り、曹武帝に献上したことから始まったと云われています。
わが国では嵯峨(さが)天皇の時代(西暦810年~824年)の元旦に宮中の儀式として用いたのに始まり、次第に一般に普及して、新年の始まりの習慣として定着するようになりました。
「屠」は「殺す」という意味で、「蘇」は鬼の名前です。
病を起こす鬼の総称であって、細菌を殺す、つまり伝染病の予防の意味で作られたといわれています。
屠蘇の処方は種々あり、古文書に依り、それぞれに異なった記載が見られますが、今日のわが国で用いられるものとしては、白尢(はくぼう)、山椒(さんしょう)、桂枝(けいし)、防風(ぼうふう)があります。
桔梗(ききょう)等をそれぞれ同量に配合して細かく刻んで白い絹の袋に入れ、大晦日の日中から「みりん」の中に浸しておくと、元旦には特有の芳香を放ち、婦女子にも飲める飲料となります。
昔から「お屠蘇」は幼少のものが先ず一番に飲む事になっています。
その云われは中国の古書の「礼記」によるもので、それには親が病気になった時には、先ず、子供達が薬をなめる、すなわちお毒見をすると書かれています。
屠蘇散を構成している漢方薬を調べて見ると、「白尢」は健胃利尿作用があり、「山椒・桂枝」は血行を良くし、寒気に対する抵抗力を強め、「防風」は風邪薬であり、桔梗は気管支の薬です。
全体として胃腸の強壮と風邪の予防の総合役の意味を持つと解釈できます。
杜氏という名前について
お酒を造る際の統率者は、ご存知の通り「杜氏」と呼ばれていますが、この杜氏という名称の語源については、諸説あって定かではありません。
中国では、最初にお酒を造った人として「杜康」の名前が残っています。
(「三国志」でも赤壁の戦いの前に曹操が詠んだ詩の中に“お酒”の意味で“杜康”という言葉が使われています。
)
その杜康の杜に氏(うじ)を付けて「杜氏」としたという説や、古代の「口噛み酒」を造っていたのが“刀自(とじ)”と呼ばれる女性達だったため、そこから転じて“杜氏”になった等、他にも様々あります。
下らない?お酒
現在“下らない”と言う言葉は“つまらない”とか“価値がない”という意味で使われています。
その語源は、昔「下らない酒」と呼ばれているものから来ていると言われています。
戦国時代末期頃に現在の日本酒に近いお酒が関西を中心に造られるようになり、江戸に幕府が開かれると池田や伊丹の美味しいお酒が江戸にも送られるようになりました。
天皇がいる京都から見て、江戸に行く事は“下り”にあたります。
江戸に送られた「下り酒」に対し、関西以外の地方で造られたお酒は「下らない酒」と呼ばれ一段低く見られていた事から、「下らない」という言葉が生まれたそうです。
もちろん現在では酒造りの技術が発達し、関西に限らず日本全国で美味しいお酒が造られています。
泥酔について
お酒を飲んで飲んで、ふにゃふにゃになった状態。この状態を泥酔(でいすい)と言います。
たしかにふにゃふにゃになっていると泥のように見えないこともありませんが、
この言葉の由来は、実は中国に伝わる空想上の虫からきています。
この空想上の虫の名前は泥(でい)。
この虫は、南の海に住んでいる骨の無い生物です。
水の中では生き生きしていても、水がなくなると、酔っぱらったかのようにフニャフニャになって、泥のように積み重なるのだそうです。
この虫が水を失った時の状態と、ひどく酔った時の状態がそっくりなため、泥酔とよばれるようになったのです。
ちなみに、酔っぱらいをトラということもありますが、これはお酒を『ささ』というところから来たシャレですね。
ささ(笹)にはトラ(虎)がつきものだ! という発想から来たようです。